Abstract: Matsuda Yasuyo (2009)

日本近世の版本における蔵版目録の研究
須原屋市兵衛の出版物を中心に

日本における近世商業出版活動は、法令文書、判決文書、組合文書、出版物などによって伺うことができる。御触書集成・撰要類集・御仕置例類書・徳川禁令考・市内取締類例集などの法令文書、判決文書が収められた資料を繙くことで、商業出版業に対してどのような政策が実行され、これらの資料に加えて商業出版業組合の規定書や名簿、各種記録簿などの組合文書を丹念にみることで、そのような社会状況のもと、どのような商業活動が展開されていたのか伺うことができる。また、出版物の質や量、すなわち内容の種類や出版点数を分析することで、市場が扱っていた商品の種類、すなわち市場を通して人々に受容されていた書籍の傾向や、市場の成立・拡大過程がわかる。

Abstract: Hirai Shoichi (2009)

National Art Centre Tokyo
On The Japan Art Catalog (JAC) Project.

展覧会カタログは、美術の研究者にとって、作品や作家に関する最新の調査・研究の成果が盛り込まれた貴重な情報源である。しかし、日本で発行されるほとんどの展覧会カタログは、会期中に開催場所で限られた部数が販売されるのみで、一般の出版市場に流通しない。書店や出版取次を通して購入することができず、書誌コントロールもされない、「灰色文献」の範疇となっているのが現状だ。

こうした資料を網羅的、体系的に収集するのは、日本の美術図書館にとっても長年の間、非常に困難な課題と位置づけられていたし、いわんやこれを海外で実現しようというのはまず不可能に近かった。こうした状況を打開するための取り組みとして1995年に設立されたのがJapan Art Catalog (JAC)プロジェクトである。JACは、海外からの入手が困難な日本の展覧会カタログを収集し、北米、欧州、大洋州のディポジトリー機関に送付するプロジェクトである。

Abstract: Hasegawa Masako (2009)

フランス国立ギメ東洋美術館図書館所蔵の和古書について

フランス国立ギメ東洋美術館図書館と和古書コレクション:三人の収集家、今泉雄作、ポール・サヴァティエ、アンリ・リヴィエール。 1879年、ギメ博物館は設立者エミール・ギメの出身地であるリヨンでオープンした。さまざまな理由から、パリに移転され、1889年に国立ギメ東洋美術館として再オープンした。 ギメの構想では、「思想の工場」たるべく宗教博物館を設立することであった。そのため図書室は建物の中心、すなわち円形ホールに作られた。1876年に日本での宗教調査で持ち帰った仏教書などが核となる和古書コレクションは、図書館開館以来、収集家たちの寄贈や遺贈で充実してきた。

なかでも、ギメのリヨン時代に仏教書の翻訳などで貢献した今泉雄作の仏教書のコレクション、幕末に横須賀造船所の海軍医官として日本に滞在したP.A.L. Savatier の本草学関係のコレクション、印象主義とジャポニズムのはざまにあって、日本の木版画から強く影響をうけたHenri Rivière の浮世絵版画のコレクションは特筆に価する。

Abstract: Shyu Shing-ching (2009)

台湾大学図書館所蔵の日本研究文献から見た日本殖民史

台湾大学の前身は日本殖民地時代の台北帝国大学であるため、豊富な地域研究の日本語旧籍資料を収蔵している。1928年に設立された台北帝国大学は、1945年終戦まで五十年間に亘って、台湾の総合大学として、日本の台湾での教育責任を負いながら、日本政府の南進政策(南方研究)に合わせた「国策大学」としての役割も果たしていた。当時、台北帝国大学図書館の蔵書方針は、学術研究と教育のニーズに応じ、東洋の文史分野の中・日・西文の典籍資料を大量に収集していた。1945年10月15日を境に、台北帝国大学は台湾大学に改正され、図書・学術雑誌各種を受け継いで約四十七万四千余冊の出版物が台湾大学図書館の重要な資産になった。

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